「過去最高難易度」と言われた第38回社会福祉士国家試験。なのに合格率は60.7%。この矛盾、ちゃんと説明できますか?
まず結論から:数字だけ見ると誤解する
第38回の合格発表を受けて、SNSでは「難しかった」「合格点が下がった」という声が相次ぎました。
一方で、合格率は 60.7% ——近年でも高水準の数字です。「難しかったのに、なぜ合格率が高い?」
たすこの矛盾に見える現象こそ、今回の試験の本質を理解するポイントです。
この記事では、公式発表のデータをもとに、受験生が本当に知りたい”読み解き方”をお伝えします。
第38回 基本データ一覧
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験日 | 令和8年2月1日(日) |
| 合格発表日 | 令和8年3月3日(火)14時 |
| 受験者数 | 25,430人 |
| 合格者数 | 15,438人 |
| 合格率 | 60.7% |
| 合格基準点 | 50点以上(129点満点) |
合格基準点は「総得点の60%程度を基準とし、問題の難易度で補正」と公式に明記されています。つまり、試験が難しかった分だけ、合格点が引き下げられました。
📌 通常年の合格点は70点前後が目安。今回の50点という数字は、それだけ問題が難しかったことの証明です。
「難しかった」は本当か?補正が示すもの
社会福祉士国家試験には、得点調整(難易度補正) の仕組みがあります。
毎年「6割程度」を合格ラインの目安にしながら、実際の難易度に応じて上下に調整されます。第38回の合格点50点(129点満点)は、約38.8%の正答率で合格できるという計算です。
これは「試験が難しかった」という受験生の感覚を、数字が正直に裏付けています。SNSでの「難しすぎた」という声は、決して感想の誇張ではありませんでした。
合格率60.7%の”からくり”——新卒と既卒で全然違う
ここが今回、他の記事ではあまり触れられていない最重要ポイントです。
ルート別・新卒 vs 既卒の合格率
| ルート | 新卒合格率 | 既卒合格率 |
|---|---|---|
| 福祉系大学等 | 78.4% | 42.2% |
| 福祉系短大等+実務経験 | ー | 38.8% |
| 短期養成施設等 | 70.8% | 39.0% |
| 一般養成施設等 | 81.7% | 40.0% |
この表を見ると、全体の「60.7%」という数字の意味が変わってきます。
新卒者は7〜8割が受かっている。既卒者は4割程度しか受かっていない。
「60.7%」は、この2つの数字が混ざり合った平均値に過ぎません。
なぜ既卒者の合格率はこんなに低いのか
現場で働きながら資格取得を目指す既卒者が多い中、この差には明確な理由があります。
① 勉強時間の確保が難しい 介護・福祉の現場は人手不足。仕事終わりに教科書を開く体力は残っていないことも多い。
② 出題範囲が広く、記憶の維持が難しい 社会福祉士の試験範囲は19科目。1年以上のブランクがあれば、前回覚えたことも抜けていく。
③ 「また来年でいいか」という先送り 仕事をしながら受験できるため、危機感が薄れやすい。
私自身も福祉系の国家資格を複数取得してきた立場から言えば、「現場で働きながらの受験」は想像以上に消耗します。既卒者の合格率の低さは、その人たちの努力不足ではなく、環境の厳しさを反映した数字だと思っています。
年齢別データが語ること
合格者の年齢内訳も興味深い結果になっています。
| 年齢区分 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| ~30歳 | 7,273人 | 47.1% |
| 31〜40歳 | 2,389人 | 15.5% |
| 41〜50歳 | 3,098人 | 20.1% |
| 51〜60歳 | 2,098人 | 13.6% |
| 61歳〜 | 580人 | 3.8% |
合格者の約半数が30歳以下。これは新卒ルートの合格者が多いことと一致します。
しかし注目すべきは、41〜60歳の合格者が合わせて33.7%(約5,200人)いるという事実です。現役世代・子育て世代・介護しながら勉強している世代——そういった方々が5,000人以上、この試験を突破しています。
過去5年間の推移で見える「試験の変化」
| 回 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 第34回 | 34,563人 | 10,742人 | 31.1% |
| 第35回 | 36,974人 | 16,338人 | 44.2% |
| 第36回 | 34,539人 | 20,050人 | 58.1% |
| 第37回 | 27,616人 | 15,561人 | 56.3% |
| 第38回 | 25,430人 | 15,438人 | 60.7% |
第34回(2022年)の31.1%から第38回(2026年)の60.7%へ。合格率は約2倍になっています。同時に受験者数が減少傾向にあることも見逃せません。第35回の36,974人から第38回は25,430人と約1万人減。
これは「受験者の絶対数が減っている=福祉人材の供給が細っている」ことを示しており、国としても合格率を高める方向で調整している可能性があります。福祉・介護業界の人材不足が、試験制度にも影響を及ぼしているかもしれません。
今回合格できなかった方へ
まず、受験した事実そのものに価値があります。
特に既卒で仕事をしながら受験した方——合格率38〜42%という厳しい条件の中で挑んだことは、それだけで誰かに誇っていい。
不合格通知は3月6日(金)に発送され、総得点・各科目群の得点・無得点科目群の情報が含まれています。その通知こそが、次回合格への地図です。
どの科目群で点が取れていないかを確認し、次の試験に向けての戦略を立て直してください。
次回受験に向けた戦略の考え方
「0点科目群」を絶対になくす
合格条件の一つは「全6科目群に得点があること」。どれだけ総得点が高くても、1つの科目群で0点なら不合格です。苦手科目の底上げを最優先に。
既卒者ほど「仕組みで勉強する」
意志力だけで勉強を続けるのは難しい。勉強時間をスケジュールに組み込み、隙間時間にYouTubeや音声教材を活用するなど、生活の中に学習を埋め込む工夫が鍵です。
模擬試験を「本番の練習」に使う
本番形式に慣れることで、問題の読み方・時間配分の感覚が鍛えられます。点数よりも「解き方の確認」として活用しましょう。
まとめ
第38回社会福祉士国家試験を一言で表すなら、「難しかったが、正しく補正された試験」です。
- 合格点50点は、難易度の高さを反映した適切な調整
- 合格率60.7%の裏には、新卒と既卒の大きな格差がある
- 受験者数の減少は、福祉業界全体の課題と連動している



合格した方、本当におめでとうございます。不合格だった方、次こそ一緒に突破しましょう。
この記事は、公益財団法人社会福祉振興・試験センターが公表した「第38回社会福祉士国家試験の合格基準及び正答」「合格発表について」をもとに作成しています。




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